(一)
「五島の冬シビ(マグロ)をはこんでやる」
それが紀州漁師の武平次がとりつかれた途方もない夢だった。
武平次の生まれた紀州矢口村(現三重県海山町)は、ゆたかな黒潮がながれる熊野九十九浦のひとつである。物心ついたころから海にでていた武平次は、三十一歳のとき徳川幕法にすさまじい憎しみをいだいた。
それは北前船の「遭難」が原因だった。
『風と武平次(ぶへいじ)』(一)
「五島の冬シビ(マグロ)をはこんでやる」
それが紀州漁師の武平次がとりつかれた途方もない夢だった。 武平次の生まれた紀州矢口村(現三重県海山町)は、ゆたかな黒潮がながれる熊野九十九浦のひとつである。物心ついたころから海にでていた武平次は、三十一歳のとき徳川幕法にすさまじい憎しみをいだいた。 それは北前船の「遭難」が原因だった。 |
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